新刊紹介

井戸川射子『遠景』(思潮社) 言葉の生まれる過程を繊細に見届ける、その景色の彼方へ

 体と言葉が通じないので泣いている/わたしは見守る役だ/豊かさがよく分からないものとしてあることの/不安は連続、密集していて

 

瀬崎祐 『水分かれ、そして水隠れ』(思潮社) 散文詩で綴る新境地 虚の言葉、現の言葉

 嵐が過ぎた朝の湖岸には おびただしい数の眼球が打ち寄せられている

 

北原千代『よしろう、かつき、なみ、うらら』(思潮社) 架空の子どもたちに捧げる純粋な魂

 滝のドアをくぐって来る客人はみな/透けることができた/運命はもう隣町の信号を渡っている

 

山本育夫『HANAJI  花児1984-2019』(思潮社) 35年の集大成 花児の三部作

 ぼくの背後に/ピタリとついている/空虚を喰うケモノ

 

髙草木倫太郎『電解質のコラージュ』(七月堂) おびただしいイメージを張り合わせる実験の果てに見える 今ここ!

 プレゼント! すごいぞプレゼント!、非常装置の鈴の音、鼓膜に響くはドアコックが擦れる音、