園子温監督「希望の国」

 園子温監督「希望の国」。
私は、この映画を社会派のメッセージというより、人間の感情の問題として受け止めた。この様変わりした日本をどうやって生き抜こうか。生きているかぎり、良くも悪くも明日は来る。
 隅々まで考え抜かれた映像と言葉。認知症の智恵子の「帰ろうよ」という台詞の中に重層的な記憶の時間が流れて、人は今だけで生きているのではないと気づかせてくれる。大谷直子の演技に瞠目。園監督の俳優の演技を引き出す力がすごい。
 福島の取材を大切にし、心をこめて、怒りをこめて差し出された作品。世界に問うてほしい。