岡崎武志『蔵書の苦しみ』(光文新書)

 岡崎武志さんの古本をめぐる本のずっとファン。というか、岡崎さんが上京し、デビューする前から知っている。12月1日の両国のイベントも楽しかった。岡崎さんは、多才でイラストもうまい。久しぶりに会って、「著書はたぶん全部読んでるよ。偽名以外は。」と言ったら、「うそつけ」と言われてしまった。ホントなのに。岡崎さんの本が出ると親戚のお兄ちゃんのようでうれしい。なぜ、トークイベントで歌手でもないのに歌うのかは、意味不明だけれど。みんなじっと聴いているからなお不思議だ。どういう時間稼ぎなのか、趣味でなのか。
 岡崎さんは、「今は、どんな失敗をしてるんや。言うてみぃ」というおもしろいことを聞いてくれる。どんくさい私をどんくさいまま受け入れてくれててうれしい。千円の小さいイラストを「これ、もってたら100倍に値上がりするかもしれんから、買うとき」と、言われた。そんな言葉も愉快で人徳に満ち満ちたお人なのだ。私も、あんなすてきな人徳と話芸をもって、人を笑わせられたらなーと思う。

 『蔵書の苦しみ』は、「楽しみ」ではない「苦しみ」というところで共感が共感を呼びヒットしているとのこと。よかったですね。私も、これ以上本を2階になるべく上げないように注意はしているが、今度は一階の廊下やキッチンまですでにあふれてきて・・・。清水哲男さんが、蔵書を電子化しているというところがあまりに新鮮で目が釘付けになった。本をもつことは、業だけれども、その業がその人らしさでもあり、生き方でもあると思う次第。蔵書を手放す時のがっかり感は身につまされるなぁ。大事な本がなかなか探せないのも身につまされるなぁ。

少し前の本では『上京する 文学 〜漱石から春樹まで〜』がよかった。楽しく読めて、力作です。