津村節子展(吉村昭文学記念館)12/19まで

 まだ新しい「ゆいの森あらかわ」の中にある吉村昭の充実した文学館。福井県ふるさと文学館とも協定しています。「津村節子展」は、その一周年を記念しての合同企画展になっています。津村節子さんは、今年90歳。長きに渡る創作活動を振り返る充実した展覧会でした。
 津村節子さんとは、福井や「吉村昭さんお別れの会」でお目にかかったことがあります。
福井の方々との交流も大切にされていました。私も何度かお声をかけていただきました。鯖江市に残る石田縞復元の物語『遅咲きの梅』、春江を舞台にした『絹扇』、越前和紙を題材にした『花がたみ』など。女性の生き方や心を真摯に見つめる作風に、居住まいを正してきました。吉村氏の死と向き合う壮絶な日々も、私小説として拝読せざるを得ませんでした。展示品で心を惹かれたのは、瑠璃色の七宝焼きのネックレスです。短大の卒業祝いに吉村氏から贈られたとのことですが、吉村氏は「鉛筆だ」と言って箱を渡したというエピソード。なんとも素敵な渡し方ではありませんか。照れの中にも深い愛を感じます。
 吉村昭氏は、時代にとって要になる問題を常に取り上げ、綿密な取材の下に書き続けたまれにみる作家です。2011年以降再読された『三陸海岸津波』は、原題『海の壁―三陸沿岸大津波』(中央公論社)で1970年の出版でした。民の声は、いつでも現地にあったのに‥‥です。『関東大震災』も、今再読されていますよね。